餅のような感触で、指で押すとじわっと受け止め押し返す「エクスジェル」。横方向の動きに追従するのが特徴的だ。


低反発でも高反発でもなく、体圧を流動させて分散させるクッション素材が「エクスジェル」。
一般的なウレタンフォームの10倍の衝撃吸収力を発揮する。
1969年に島根県奥出雲で創業した加地は、当初はスポーツシューズの縫製を専門としていたが、国内製造が工賃の安い海外に出ていく流れのなか、製造下請けから脱却すべく新事業へ乗り出す決断をした。その大きな成果が、1995年に自社開発した新素材「エクスジェル」であった。同社のエクスジェル使用の車椅子用クッションシリーズは、機能性とデザインを兼ね備えた画期的な商品として評判を呼び、今も多くの車椅子ユーザーに愛用されている。
同社の製品は、すべて奥出雲の本社工場で生産されている。素材同士を適切に貼り合わせ、形状を整え、微調整を加えつつ縫製・仕上げへと至る工程は、随所に熟練の職人技を要する。「じつは縫製ひとつとっても、かなり複雑なことをやっています。これも創業以来の伝統を受け継ぐ部分です。クッション部分もできる限り薄く仕上げて、ふだんの運転の目線を変えないようにしています」と井戸辺氏は自信を見せた。
「医療・介護に関わるなかで、座ることに悩んでいる方が相当多いことに気がつきました。そして弊社の方向性も、次第に座ることに特化していくようになりました。そこでまず着目したのが自動車の運転です」と語るのは、同社で研究開発・商品企画を担当する井戸辺彰史氏。
研究を進めるなかで、タクシーなどの長時間ドライバーや腰まわりに疾患を抱える人々が疲れや痛みに悩まされている実態がわかってきた。「自動車の運転中は、ちょっと立ったり姿勢を変えたりということがしにくいですよね。じっと座ったままになりがちで、より悩みが出やすい環境といえます」。そして独自素材のエクスジェルと介護用品で培ってきた座ることのノウハウとをあわせ、自動車のシート用に開発されたのが「ハグドライブクッション」である。
「背骨の土台である骨盤をしっかり支えることで背筋が伸び、腰への負担も軽減される。これも介護で培ってきたノウハウです。エクスジェルの効果を最大限活かしつつ、どんなクルマのシートにも、そしてどんな体格の方にもフィットするように形状を工夫しました」


包み込むように骨盤をサポートして、正しいドライビングポジションで運転ができる。そのため、無意識に体を支える必要がなくなり、疲労軽減につながる。


シートクッションはお尻と太ももの部分で高さを変え、快適で自然なドライビングポジションが取れるように配慮された形状。