植物性油脂を原料とし、芯に和紙やイグサを使用したろうそくのことを「和ろうそく」と呼ぶ。パラフィンワックス製で糸芯の「西洋ローソク」に比べて油煙が少なく、煤で仏壇を汚しにくいことから、日本では室町時代から重宝されてきた。高火力で、炎は夕日のようなオレンジ色。芯は中空構造になっており、常に空気が供給されるので火が消えにくく、風がなくとも空気流動で炎がゆらぐ。
江戸時代、本州と北海道を結ぶ「北前船」で和ろうそくを出荷していた福井県は、浄土真宗の信仰篤き和ろうそくの一大産地である。中でも、慶応元(1865)年創業の小大黒屋商店が作る和ろうそくは、福井県にある曹洞宗の大本山・永平寺をはじめ、宗派を問わず全国各地の寺院御用達の逸品。同店営業の定兼吾郎さんは語る。
「現代では金型を使うのが主流ですが、私たちは趣ある質感にこだわり、独自の木型を使用します。炎の大きさとの調和や、ろうが垂れにくい形状を考えて設計した木型のフォルムは、当店の自慢です」
製造に携わるのは、平均年齢約60歳のベテラン職人たち。まずは竹串に和紙を巻きつけ、ろうで固めて芯を作る。次に、芯を木型に入れてろうを流し込むのだが、ろうは熱すぎても冷めすぎてもうまく固まらない。気温も考慮して慎重に温度調節を行なう必要があり、感覚を鍛え上げた熟練職人だからこそ可能な難しい作業である。
今回は、家庭で使いやすい手頃なサイズの和ろうそくをご用意。生成り色の「生イカリ」はどんなインテリアにも合い、「手描き花ろうそく」は絵付け師がひとつひとつ描いた花々が美しい。どちらもイカリ型と呼ばれる定番の形で、付属の燭台に置くだけで様になる。
「和ろうそくは仏事の印象が強いですが、炎の波形にはリラックス効果をもたらす『1/f ゆらぎ』があるともいわれますので、インテリアとしてもおすすめです」(定兼さん)
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美しく退色しにくい花ろうそくは、絵柄の異なる5本をセットでお届け。鮮やかな色合いが空間を華やかに彩る。
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底から見ると、芯が中空構造になっているのがわかる。空気が絶えず芯の中に供給され、部屋の中でも炎がゆらめく。
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花ろうそくの燭台は、黒、緑、青の3色をご用意。いずれも深みのある色合いで、シーンを選ばず使用できる。
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表面を削る仕上げの工程まで1本ずつ手作業で行なわれる。ろうそく1本分につき2~3名の少数精鋭で製作される一級品だ。
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竹串に和紙を巻きつけて固めた後、さらにイグサを巻く。こうすることで溶けたろうがしっかりと吸い上がる。
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修復しながら何十年も受け継がれている木型。芯をまっすぐに入れて、木型の穴にろうを流し込んでいく。
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ろうが固まったら、竹串を取り出す。その後、はみ出たろうを刃物で丁寧に切りそろえ、木型から取り出す。
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表面のムラを整えて成形した後、ひとつひとつ人の目で検品を行なう。完全自社生産ゆえの質の高さがうかがえる。