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BAR CINEMA~この映画に乾杯!(第2回)『007』 ――ジェームズ・ボンド マティーニの流儀

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2013/12/25

BAR CINEMA~この映画に乾杯!(第2回)『007』 ――ジェームズ・ボンド マティーニの流儀

第2回:007――ジェームズ・ボンド マティーニの流儀

BAR CINEMAへようこそ。

このバーでは、皆さまの記憶に残る映画の名シーンを彩った素敵なお酒を、映画の時代背景、お酒の由緒・成り立ちと合わせてご紹介し、ご賞味いただきます。

シェイクして作ったウォッカマティーニ。
液面には細かく砕けた氷の粒、アイスフレークが広がる。

Vodka matini, shaken not stirred.

「ウォッカマティーニをシェイクで」
私は毎日カウンターに立ち、お客様にカクテルを提供していますが、時々こんな注文を承ります。

たいがい、このようなお客様は映画『007』(ダブル・オー・セブン)の大フアンで、主人公ジェームズ・ボンドが愛飲したカクテルを喜んで楽しんでいらっしゃるのです。

ウォッカマティーニは、1962年に公開された映画『007』の第1作「ドクター・ノオ」に早速登場します。アメリカとソ連の冷戦下、味方の諜報部員の死の背景を探るため、ジャマイカに飛んだMI6のエリート諜報部員ジェームズ・ボンド(ショーン・コネリー)。記念すべき最初のウォッカマティーニは、南国のホテルのスイートでルームサービスから供された一杯でした。サービスの男が「ミディアム・ドライ・ウオッカ・マティーニ。ご注文通り、ステアでなく、シェイクで」と告げ、ロックグラスにオリーブをあしらった一杯をボンドに渡します。
これ以降、映画007シリーズには、華麗なシャンパンとともに、しばしばこのカクテルが登場することになります。

さて、みなさんもよくご存じのカクテル、マティーニ。材料にジュースなどは一切使わない、強烈なアルコール度数を持つカクテルです。
現在、世界のスタンダードレシピはこうです。
①ドライジン、ドライベルモットをステアしてカクテルグラスへ。
②レモンピールを振りかけてオリーブを飾る。
この内容を詳しく見ていきましょう。

ベースになるドライジンは、アルコール度数が40度以上あるものがほとんど。麦などの穀物を蒸留したものにジュニパーベリー、レモン果皮やコリアンダー(中華の香菜、タイ料理のパクチー)などの香草類で風味付けされた個性的なお酒です。ジュニパーベリーは、ヒノキ科の一種の杜松(ネズ)の実で、松脂のような香りがあり、鼻をつんと刺します。ジンを直接嗅いでみるとこの香りがしますよ。
そしてドライベルモット。これは白ワインをベースにした薬草種で、ほんのり甘く、アルコール度数は十数度です。

このふたつをミキシンググラスという大きなガラスの器に入れて、氷とともにかき混ぜます。ほどよいところでカクテルグラスに注ぎ込み、削り取ったレモンの皮を指で二つ折りにして果皮のオイルを飛ばし、グラスに振りかけて香り付けします。最後にピンにさしたオリーブを飾って出来上がりです。
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    ステアという処方は、材料と氷を入れてスプーンでかき混ぜるだけ……ですが、バーテンダーはこの作業に細心の注意を払います。肝心なのは、氷を溶かさないようにしながら、意図的に少しだけ溶かすこと。氷から出たこの少量の水が、ほかの材料と融合してカクテル本来の味わいを作るのです。

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    左が『スミノフウォッカ』40度。映画007ではほぼ一貫してこのウォッカが使われています(青ラベルの50度もたまに登場)。左がドライベルモットの『ノイリープラット』。

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    シェイカーに材料と氷を入れて振り、混ぜ合わせるのがシェイク。シェイカーと氷をぶつけないようにしながら、液体を縫うように氷を通し、同時に液体に空気を混ぜていきます。シェイクされたカクテルはひんやり冷たく、細かい気泡をまとってふわっと白く仕上がります。

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    キナリレーの代わりにリレーを使って作ったヴェスパー。レモンの果皮をらせんむきにして入れるのは、当店でのアレンジ。

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    左から『ゴードンジン』『スミノフウォッカ』『リレー』。ジンとウォッカは瓶ごと冷凍庫で冷やしておきます。

酒を彩る器

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